家の中は冷気が満ちている。今日の天気は雪。学園から帰ってきた私を迎える父さんがいない。いつものことながら、研究が捗っているか、私が知らないだけでフィールドワークに行っているのかもしれない。どのみち、私が休暇を家で過ごすことは伝えているから、数日以内には帰ってくるだろう。そう思っていたはずなのに、雪休暇が終わり学園へ戻る日になっても帰ってこなかった。
父さんも忙しいんだろう。そう思うことにしていたが、違った。
駅から学園へ向かう途中に、いつも私に引っ付いて回る赤寮の生徒が走ってきて私に耳打ちする。
「君、大丈夫か? お父上が捕まったそうじゃないか」
「は? 何を言ってるんだお前は」
「今日の新聞だよ。見てないのか?」
そう言って彼はカバンの中から折り畳まれた朝刊を私に差し出して、一面の隅の欄を指差す。見出しには「虚国支持団体取り押え」とある。鼓動が耳の奥で大きく鳴る。新聞をひったくって、小さな文字を読む。見知った名前がいくつも並び、その中に父さんの名前があった。本日公判があるがおそらく有罪で処刑されるだろうとの記者の言葉。
父さんは追われていたのか。それともすでに捕まってしまっていて、帰ってこれなかったのか。
父さんは私のことも、他の魔物たちのことも平等に「人間」として扱ってくれた。父さんがいなければ私はここで生きていられなかった。拾ってもらえなかったら、父さんの助けになるように研究者を目指すこともなかった。父さんはとても素晴らしいことをしていたのに、誰が悪者なんだ。なぜ、世界は私たちにひどいことをするんだ。
「気をつけた方がいいね。新聞の隅々まで見ている生徒はあんまりいないだろうけど、君、優秀だから何かあった時に目立つぞ。そうだ。何かあったら俺が助けよう。なんでも頼ってくれていい。君と俺は同類だから」
隣であれこれ言う声が遠くに聞こえる。頭が痛い。
翌日の朝刊で私は父さんたちが処刑されたことを知った。
なら私が、父さんがめざした平等な世界を……
幕間: 愁嘆、瞋恚。
星天の守り子