「彼誰」
夕陽を強く反射した飛行機雲を
等分して過ぎる鴉の翼は北へ
その不可視の一線は
前後不覚に立つ者の視線と
天頂で交わる
十一月のかぜ
はなれていく ひつじ雲のわたげ
細かくちぎれてゆき とけていく
うす青とうすだいだいの とうめいな夕ぐれ
さらさらと流れる 十一月のかぜ
背すじを伸ばした メタセコイア
焔
小さな部屋の
大きな窓から
差す陽光は
あの手に抱えた
黒い楽器を
煌々と照らした
あの人はいつも
すずしげな姿で
隠れた焔を
かなでていた
幻影の余白における交点
あの蝶の軌跡は、等間隔の波を生む。
またたいた瞳とひらめいた鱗粉の
瞬間的同一に囚われた。
空が羽に落とす透明な終止符は、
消滅から救い出す君の声は、
通り過ぎた後ろか
何でもないここか
誰も知らぬ先か